蒲公英のかたさや海の日も一輪 中村草田男
季語は蒲公英で春。草田男は犬吠埼でこの句を詠んだとされています。一輪の蒲公英が、怒濤の海に向かい、地に張りつき身を縮めるようにして咲いている。たしかに蒲公英は「かたい」印象を受ける花ですが、この句では海辺に咲くことで一層「かたく」感じます。そして曇天の空を見上げれば、そこにも「かたく」寒々とした太陽が、雲を透かして「一輪」咲くようにして浮かんでいるといった情景でしょうか。
かつて、春たけなわの季節には郊外の道端や土手は群生した蒲公英をよく見かけたものですが、最近はお目にかかれなくなりました。大量のコンクリートが使われると土壌がアルカリ化して蒲公英が生育しにくくなるそうです。蒲公英は自然破壊のバロメータと言えます。
薬用となるのは開花する前の地上部と根茎です。これを陰干しにしたものを「蒲公英(ほこうえい)」といって漢方では急性乳腺炎の初期に連翹などと配合して使われます。