☆痛みの裏にある根本原因を探り、その原因を元から断つ!・・・同じ痛みに対しても治療は様々です。
「痛みは多岐にわたり、全身のあらゆる部位に表れ、QOL(生活の質)を悪くします。患者さんのつらさは待ったなしで、すぐ取り除いてあげなければならないものですが、痛い部位の痛みを取るだけでは、対症療法にすぎません。
漢方では痛みだけを診るのではなく、その裏にある、痛みが起きる原因を突き止めて治療するという考え方をします。言ってみれば、”天守閣に直接矢を放つの ではなく、外掘りを埋めたり、石垣を少しずつ崩したり”というイメージです。そのため四診より、その人の体質と症状のパターンである”証”を把握すること が大切です」
では、痛みの原因にはどういうものがあり、漢方でどう対処していくのでしょう。
「例えば肩が痛い人は、その裏に血液の循環が悪い、冷えがある、水はけが悪いなどの原因が隠れています。腰痛や下肢痛も冷えが関わっていることが多いのです。それらの冷えや水っぽい状態を取り除く漢方を処方すると、痛みも同時に軽減します。
一方で、帯状疱疹後神経痛には、頻尿に使う六味丸と激しい咳に使う麦門冬湯がなぜか効果があったことがあります。また、ストレスを取り除くことで効果が出る場合もあります。怒り、悲しみ、いらだち感なども痛みを増幅させるので、それらを取り除く処方も大切です」
症状がある人の生活背景を考慮することも重要です。体力のある働き盛りの中高年なのか、痩せて細々とした高齢者なのかによって、その人ならではの症状が隠れているため、個々の患者に合わせて処方をかえます。
「痛いと眠れなかったり、疲労感、抑うつ感が高まったりします。そうするとさらに痛みが強まって眠れなくなり、疲労感や抑うつ感がより増幅する、というように心身の状態がどんどん悪循環に陥ります。そのうち、心身ともに痛みに苛まれ、疲れ切ってしまいます。
漢方は長く飲まないと効かないと思われがちですが、短期で痛みが軽減する場合もあります。症状や体質については、些細なことでも話していただくことが適切な治療につながります」